1年度ごとの理事の輪番制を変える組織づくりからはじめました。
東京三田、慶応大学近くのMマンションの理事長様へお話しを伺いました。「中長期的な考え方でマンションの住環境を考えなくてはならない」という持論をお持ちの理事長ですが、お金のかかる設備の修繕・更新工事に関しては特にその必要性を意識されたようです。
「私の住むマンションは都心にある小規模のマンションで、ある程度ご近所さんの顔が見えますが、逆に小規模な為予算も限られていますしコンセンサスを取りづらい面もあります。しかし、建物の規模の大小に限らず設備は劣化し、資産価値の減少にもつながる『現実』はあるわけです。そこで大きく問題となるのが管理組合の輪番制です。これは国の制度上、予算や問題は単年度で解決していかなければならないという大きな足かせがあります。しかし設備の更新や改修の取り組みは、1年のスパンでは考えにくいのです。」
「そこで、まず私が取り組んだことは、設備の更新を中期的に考えて実行できるようにするため、居住者の承認があれば引き続き理事などの役員をすることが可能な形に規約を改正したのです。そしてそのために、私自身がマンション全体の利益につながる施策を一つ一つ立案・実行していき居住者の方から信頼される基盤づくりを同時におこないました。」
居住者からの信頼を基盤にして様々な問題を解決していくお話しは、まるで敏腕コンサルタントのようですね。住民の為に提案した事例は具体的にございますか?
「例えば防犯カメラの設置ひとつとってみても、真剣に考えなくてはならないことがたくさんあるわけです。管理会社に『防犯カメラを取り付けたいから、よろしく。』では、本当の意味での設備資産にはならないわけです。カメラに写った記録データはどれくらいの期間保存しておくべきなのか。また大きな災害のときこそ必要な記録であるべきなので、停電時にはバックアップのバッテリーが必要なはずだとか、プライバシーにどこまで配慮するか、など考えなければならない事は沢山あるわけです。それらの問題解決に為に必要な設備のコストはいくらになるかを最終的に判断してこそ、ほんとうの意味での設備投資になり住民全員の資産になると考えています。」
具体的で興味深いお話しですね。ただ、そのような住民の為になるとはいえ、強力なリーダーシップを発揮して様々な問題解決をしていくと契約している管理会社さんと対立する局面は出てきませんか?
「今までは農耕民族的「なあなあ」の波風立てない主義で、理事職を1年過ごせば良かったわけですから管理会社は楽をしていたと思いますよ。私みたいな「物申す組合員」が出てくると、管理会社の担当者は相当やりにくいでしょうね。(笑)ただ、こちらは自分たちの住まいの事を真剣に考えているわけですから、それに応えてくれない管理会社はだめです。担当者がよく変わり、前年踏襲型のいわゆるサラリーマン的な対応をする管理会社は、本当にがっかりしますね。」
水道設備工事は、業者さんとどれだけ深く関われるかが大きなポイントです。
今回、水道設備工事をサンコウ設備にお任せいただきました経緯を教えて下さい。
「まず大前提として、マンションの水道設備工事の難しさというものがあるわけです。大きく言えば2つ。ひとつは『水道管は目に見えない』ということ。2つめは『設備工事の内容は素人には分かりにくい』ということです。どちらも当たり前のことと思うかもしれませんが、この2つがあるから管理会社に『おまかせ』になってしまうのです。」「解決策としては、『素人なりに勉強して、セカンドオピニオンとして複数の会社から意見を聞く』です。それが一番だと思います。そこで知り合ったのがサンコウ設備さんだったわけです。まず、サンコウ設備さんのキャッチフレーズ『工事直販』にピンときました。当たり前ですが『管理会社は工事会社ではない』ということです。実際の工事担当者がこちらの素人目線で丁寧に説明をしていただきましたし、こちらの疑問にも『現場目線』でお答えいただきました。」
具体的に、サンコウ設備が良かったところはどこですか?
「とにかく現場経験に基づいた知識・情報が豊富ということ。それから、管理会社は全部まとめて幾らといった一度に大きな工事をやりたがりますが、サンコウさんはこちらの予算や状況に合わせた工事計画を提案頂けるところが良かったです。1回の工事でどれだけ儲けられるかではなく、長いおつきあいを前提とした提案と見積もりがでてきました。そこが一番信頼が置けました。そして当然のことですが、『直販』ならではの価格対応の期待にも、大いに応えていただきました。(笑)」
管理会社に「おまかせ」から、居住者自身に「まかせてもらう」へ発想を転換するだけで、同じ予算で2つしか出来ない事が3つできるようになるのです。
最後にご経験を元に、マンションの設備や改修など大きくお金の絡む事案にどのように対応すれば良いのかお聞かせください。
「色々な考え方を持つ人の集まりの集合住宅ですので、勿論、異論もあるとは思います。ただ最も大切なことは、私達自身も老いますし、建物も老いていくという現実です。そこをまずは、住民全体で共有することが第1歩ですね。そして限られたバジェット(予算)をどのように使うのかを中期的なスパンで真剣に考える。真剣に考えると答えは出ます。管理会社に頼むと2つしかできない予算で、自分たちで業者さんと直接やり取りしながら進めると3つ4つの事ができるわけですからどちらの道を選ぶのかは、自ずと誰でも分かる事だと思いますね。」
●取材後記
記事にする事を少々ためらうほどの辛口コメントを、ユーモアを交えてお話し頂きました。現在お付き合いのある業者さんや居住者自身にとって「耳の痛い」話しも沢山飛び出しましたが、全て理事長の公の利益を優先させる信念に基づいており、その真っ直ぐなお人柄と豊富な知識に圧倒されました。設備工事費のお話しだけではなく、制度の問題から住民の「権利」と「義務」について、最終的には助成金の活用方法など管理組合運営の為のノウハウまで示唆にとんだお話しを伺うことができました。また機会があれば、是非お話しを伺いたいと思いました。